
ジョンに会いに彼の水洗工場に行った。携帯電話も持たない根っからの風来坊ジョンに連絡を取るのは至難の業だ。コナに住んでいた当時は、工場に行って黒板に伝言を残すと、しばらくして電話がかかってきた。しかし日本からはそういう訳にはいかない。まだコーヒーの収穫が始まらないから、多分いないだろうと思ったら案の定いなかった。
ジョンは、5年程前から農閑期になるとアフリカに行くようになった。これは、CQI(Coffee Quality Institute)のCoffee Corps(コーヒー・コープス)というボランティア活動に参加しているからだ。CQIは、SCAA(Specialty Coffee Association of America:アメリカスペシャルティーコーヒー協会)の外郭団体で、生産国の支援のために活動している。いくつかプログラムがあるが、コーヒー・コープスは、海外青年協力隊のベースとなったアメリカのPeace Corpsピース・コープスのコーヒー版のようなものだ。ただし期間は、2~3週間と短い。コーヒーの消費国からコーヒー・ボランティアとして参加する人達の交通費と現地での宿泊費はCQIが支払うが、もちろん給与は支給されない。
ボランティアの内容は様々だ。
市場で受け入れられやすいコーヒー栽培を進めるためにも「1」の活動は重要だ。また栽培の指導は、生産国の人間の方が知っているから、なぜ先進国から行く必要があるのかと思われるかもしれないが、コーヒー研究所があり技術指導をしてくれるスタッフが産地を巡回している生産国はほんの僅かしかない。ほとんどが民間に任せているから、独自に農事技師を雇える大規模農園とは違い、小農家は技術的なサポートはまったく受けられないのが現状だ。先進国には、コーヒー栽培のエキスパートは数えるほどしかいないが、土壌や葉の分析の専門家や農薬のスペシャリストはいる。また焙煎技術や抽出技術は先進国の方が進んでいるから、それを指導することによって生産国の国内消費の向上につながる。
最近ではボランティアも、消費国からばかりではなく、技術的に進んでいる生産国からも少しずつ出るようになってきた。
ジョンは初めてボランティアに参加した年、水洗・加工技術を指導に行き、すっかり気に入ってしまい3か月もザンビアの村に滞在し指導した。あの性格だから、どうやら村の人気者になったとCQI事務局の連中から聞いたが、それは想像できる。
ザンビアから戻ったジョンに会って驚いた。コナの連中も皆が痩せこけて帰って来ると思ったら、丸々と太ったジョンがいた。余程水に合ったのだろう。
ジョンの工場を出る前に、宿泊先の電話番号と出発の日を黒板に書いて来たけれど、ついに連絡が無かった。きっとまたアフリカのどこかの国で陽気にコーヒーの技術指導をしているのだろう。
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