失われたコーヒー、まだ誰もその価値を見出していないコーヒーを探し求めて旅してきた。
いつしか人は僕をコーヒーハンターと呼ぶようになった...

コーヒー探訪記

2008年7月31日③

ハワイに14年半滞在したが、日本に住むようになって初めてハワイの良さと、どうして日本人がハワイに行きたがるのか理解できた。住んでいる時は、あの気候も大自然も当たり前のように感じていた。

長年の熱帯生活を終えて日本で生活を始めた時、みんなに冬が辛いでしょうと言われ、自分でも最初の冬を迎える時は覚悟していたが、意外にこんなものかと過ごしてしまった。寒さは服を着れば耐えられるが、日本の夏の蒸し暑さには参った。

環太平洋の中で、ハワイほど湿度が低い場所はないと聞いた。僕が住んでいたコナの家は、ベランダからクジラのジャンプが見える程海に近かったが、クーラーを使うのは年に数えるほどだった。湿度が低かったから、部屋の中央に取り付けたシーリングファンで十分暑さをしのげた。屋外でも日中は暑いけれど、日陰に入ると涼しくて爽やかだ。

ホノルルに住んでいる人達は、コナをとても暑くて田舎だと思っている人が多く、他社の日本人駐在員からも《よくあんな暑い田舎に住んでいますね》と言われたものだ。その度に、《あなた達こそ、よくあんなビルばかりで自然もなく、ハワイらしさの薄いホノルルに住んで、日本人とばかり付き合っていられますね。コナに住んで、地元の人達と仲良くして大自然を堪能し、たまにホノルルに行って買い物をして帰ってくる方が、僕には豊かな生活だと思えますけどね。》と言い返していた。

ホノルルの人達が、コナを暑いと思い込んでいるのは、コナウィンドのせいかもしれない。

オアフ島の南に面したホノルルに、ある時期になると南東から熱い風が吹いてくる。これを、コナウィンドと呼んでいる。コナの方角から吹いて来るからコナウィンドなのだろうが、ハワイ語でコナは、強いという意味がある。だからこの言葉は、コナという地方の風ではなく、「強い風」とも解釈できる。

コーヒーは、熱帯の暑い地方で栽培されていると思われがちだが、アラビカ種は高温多湿の地は向いていない。年間平均気温が、23度前後で雨期と乾期が分かれている環境が適している。海抜の高い方が良いコーヒーが取れると信じられているが、実際は海抜と品質は直接関係ない。一日の温度差が品質を決める。

コナは、日中は太陽が照り付け、その上海からの温かい風が吹く。そして夜は、フアラライ山とマウナロア山からの冷たい吹き下ろしがあるから、昼と夜の温度差が大きくコーヒー栽培に適している。海抜600メートル辺りまで上がると、コーヒーは育つが、気温が低すぎて成長は著しく遅くなる。さらに海抜が上がると、もうコーヒー栽培には向いていない。

実際僕が開拓した農園でも、1月頃の最低気温で8度だったことがある。マウナケアの山頂に雪が降る季節になると、朝農園に行く時はウィンドブレーカーが必需品だった。

前週にマダガスカルに行っていたせいか、ハワイに来てアメリカの物量の多さに驚かされる。なんでも物が豊富だ。またゴミの分別をしていないのもとても気になった。物価の高いアメリカでは、リサイクルをするよりも、新しく作る方がコスト安なのだろうが、マダガスカルの日本語通訳リナが教えてくれたように、空のペットボトルを大切に使っている人々がいるかと思えば、何でも捨ててしまう国もある。100年以上前に砂糖やコーヒー栽培に従事するためにハワイに渡航して来た日本人移住者達は、きっとマダガスカルの人々のように物を大切にして暮らしていたんだろうなと思った。

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