
マルチリリの修道院に到着した。7月に植えたコングスタの成長具合の確認と、修道院が経営する学校の生徒にコーヒー栽培を指導するのが、今回の訪問の目的に一つだった。
職業訓練も兼ねているこの学校には、近隣の10の村から集まった15歳から24歳の33名の学生(女子16人、男子17人)が、寮に入って勉強している。全員農家の子弟だ。
この学校は、通年通して授業がある訳ではなく、2ヵ月授業、2ヵ月帰省を繰り返し年間6ヵ月開校する。なぜこんな変則的なプログラムなのか尋ねて驚いた。帰省中の2ヵ月間で生徒達は、持参する米と鶏2羽そして学費を用意する為に働くのだそうだ。
33人の学生のうち、親がすべて負担しているのは僅かに3人だけ。持参する米は、一人一日500gを目安に2ヵ月分、学費は約700円。現金収入の乏しいこの地域では、700円も大きな負担になる。しかし米の量の多さに驚いた。日本人はいったい一日どの位米を食べているのだろう。500gも食べないのでは?しかしマダガスカル人は、米を主食としていて本当によく食べる。修道院長に尋ねたら、通常マダガスカル人は、一日米を1㌔食べるが、ここでは半分の量に減らしてその分野菜を食べるように指導しているから500gなのだそうだ。
持参する米と鶏2羽も全員が用意できる訳ではなく、足りない分は修道院がカバーしている。寮生は、班ごとに分かれて3食を、自分たちで調理していた。
いよいよ生徒達と一緒に、フィールドに出た。コーヒー試験栽培区が、これからの教材になる。院長から紹介された僕を、訝しげに見ている。目が合うと逸らしてしまう。作業に入る前に、生徒達に質問をしてみた。彼らも僕のことを知りたいだろうが、僕も彼らを知りたい。

実家がコーヒー栽培をしている生徒が26人いて、その内一人は100本以上栽培している。50本以上の農家が17人で、残りの8人はそれ以下の栽培。コーヒーを飲む生徒が、7人しかいないのは残念だった。なぜ飲まないのか聞いたら、飲むと頭が痛くなると言う返事には驚いた。だいぶお互いに緊張が解けてリラックスし、生徒達も笑顔で話し始めた。
コーヒー栽培を続けるのに、どんな問題があるか教えて欲しいと尋ねたら、一斉に全員が口を開いた。
そうか。それでは、これから皆でこの試験区で勉強しよう!

単一の作物を栽培している農家は、マダガスカルではほとんど無い。必ず複数の作物を植えている。この地域の農家は、クローブ、胡椒、バニラ、米、バナナを植えている。生徒に一番儲かる作物を聞いたら、クローブとバニラだった。
コーヒーは、1970年代の産業国有化と世界相場の大暴落が原因で、品質も生産量もガタガタになり、今では国内消費用にしか栽培されていない。何とかしなければ!
この試験区は、いかにローコストで栽培し収量と品質を上げるかを、地元農民に理解してもらうのが目的だ。そのために選んだ品種は、冠水に強いコングスタ種。一度サイクロンが来ると、1週間水が引かないこの東海岸には、この品種が合うと選んだ。
クローブもバニラも、もちろんコーヒーも、この地域の農業は粗放農業だ。だからクローブとバニラの方が、収益があがると言っても限界がある。きちんとコーヒー栽培を行えば、それなりの成果をあが得ることを伝えたい。
「苗をプラスティックのポットから出して圃場に植えるけど、その袋をそのまま畑に捨ててあるのはおかしいよね。もっと畑をきれいにしようよ!プラスティックは、ほって置いても堆肥にはならないよ。」
僕が、黒いバックを拾い始めたら、それまで地面に座っていた生徒の数人が、立ち上がって拾い始めた。すると全員が、畑に広がって集めている。中には、バック以外のゴミもあり、一ヵ所に集めた後、ゴミの一つ一つを取り出して、有機物・無機物と分けて見せた。
そして何故畑にゴミがあっては駄目なのかを説明し、基本的な農園管理を一緒に考えた。
もう2週間雨が降っていないと言う。それでは、皆で雑草を集めてコーヒーの樹の周りに敷き詰めてマルチ(枯葉や雑草を集めてコーヒー樹の周りに敷き詰めることで、土壌の保水性を保ち、雨水の流れを弱め、また時間が経てば堆肥になる)、をしようと促した。一つサンプルを作って見せたら、また全員が作業を開始した。そしてマルチが、どんな効果があるのか説明し、他の旱魃対策もやって見せた。なにしろここでは大掛かりな灌漑設備など作れないし、彼らがここで覚えて家に帰って使える方法を取得しなければ何の意味もない。

皆でいい汗をかいた頃、お昼休みになり、生徒達は自炊の準備を始め、僕は修道院長の心尽くしのお昼を御馳走になった。

食事の前に院長が、「ジョセありがとう。生徒達が、自発的にゴミを拾ったり作業をしたりしているのを見て嬉しかった。」と言ってくれた。
日本を発つ前に、大阪のヒロコーヒーの山本社長から、修道院用に寄付してもらったカップオンのコーヒーを、修道院に着くなり院長にプレゼントしていた。茶目っけたっぷりの院長は、「ジョセの持って来てくれた日本のおいしいコーヒーは、私の3時のコーヒータイムにゆっくり飲むから取っておくの。」と笑いながら、ロブスタ100%の地元のコーヒーを昼食後出してくれた。
メールアドレスをご登録頂きますと、今後、コーヒーハンター「ホセ川島」より、活動に関するニュースレターをお送りさせて頂きます。