
コーヒー倉庫での遊びに飽きると、倉庫の端にあった小部屋に行き、パートのおばさん達の死に豆拾いを手伝った。幼稚園の頃の話だ。
死に豆なんて言葉、知らない人が多いだろうが、あの当時輸入されてくるコーヒーには、数多くの異物が混入していたし、死に豆もたくさん含まれていた。
異物は、小石、釘、木片が多く、重量で取引されるコーヒーは、コーヒーの相場が上がると異物も途端に増えてその上派手になった。小石が石になり、釘が鉄棒になり、はたまた酷いときにはビール瓶さえ入っていて、父が呆れてそれを僕に見せてくれた。
死に豆にも種類がある。
別名欠点豆とも言うが、そんな言葉が日本で言われるようになったのは、1970年代以降のことだ。
未成熟で収穫された豆、栄養のバランスが悪く中が空洞化した豆、虫食いの豆、果肉除去機で挟まれて砕けてしまった豆、死に豆の生い立ちは様々だ。しかしどの欠点豆が入っても、一杯のコーヒーには悪影響を及ぼす。ほとんどの死に豆は、簡単に見分けがつくが、未成熟や養分不足の豆は、慣れて来ないと判別がつきにくい代物だ。
収穫されて半年以内のコーヒーは、青みのかかった象牙色をしているが、徐々に枯れてきて黄色化する。青い内は、未成熟の豆も見分けが付きやすいが、変色して来ると見分けが付きにくくなる。しかし焙煎するとはっきり違いが出て、同じように焙煎しても、未成熟や養分不足の豆は、他のコーヒーよりも黄色がかった薄い色に焼き上がる。現在では、生産国の加工選別技術も向上したので、以前のように欠点豆の割合は圧倒的に減った。しかしどの生産国でも、輸出規格のコーヒーの欠点豆の混入率を決め、それを越さない限り輸出している。
日本は、人件費も高くなりもう手作業で欠点豆を除くようなことは、ほとんどやらなくなってしまったが、死に豆拾いは、おいしいコーヒーづくりには欠かせない作業だ。
当時父の会社でこの死に豆拾いを担当していたのが、大工を引退した祖父だった。
父が焙煎したコーヒーは、一斗缶に分けて入れてこの小部屋に運ばれ、3人のパートのオバサンが祖父と一緒に直径50センチ位の底がメッシュになった木製の容器に少しずつコーヒーを移し、丹念に死に豆を拾っていく。熟練のオバサンは、目にもとまらぬ速さで欠点豆を拾って行く。
子供の僕の仕事は、取り除かれた死に豆を集め、別の一斗缶に入れることだった。
メールアドレスをご登録頂きますと、今後、コーヒーハンター「ホセ川島」より、活動に関するニュースレターをお送りさせて頂きます。